聖クルアーンと科学

 

 奇跡に満ちた酸素の世界

 

全ての、生命を持つ有機体は、生きるために酸素を必要とする。私たち人間も、酸素を取り入れるために呼吸する。もしそうしなければ、体が必要とするエネルギーが得られず、私たちは死んでしまう。酸素がある場合は、酸素がない場合に比べて18倍以上も多くのエネルギーが、ブドウ糖から得られる。私たちは、日常的に自分の周囲で見られる美や、奇跡を過小評価してしまう傾向がある。ここでは、酸素と呼吸のプロセスを取り上げてみたい。奇跡に満ちた酸素の世界のいくつかの局面を、検証しよう。


私たちが吸っている空気は、78パーセントが窒素、21パーセントが酸素、1パーセントがその他の要素、水分、二酸化炭素、一酸化炭素なので構成されている。まず、空気における酸素の割合が非常に重要である。もし、空気に含まれる酸素の割合が、21パーセントではなく40パーセントであったとしたら、私たちは地球では生きていくことができない。全てではないにしても、多くの生命体が、酸素中毒症にかかってしまう。それらのたんぱく質とDNAが酸化して、機能しなくなってしまう。鉄は腐食され、木は普通よりやや高い温度で燃えるだろう。  

 

脊椎動物は、適度に、絶え間のない流れで、細胞に酸素を供給するために、二つの基本的なメカニズムを備えている。一つは循環システムで、もう一つは酸素を運ぶ分子、赤血球の中のヘモグロビンと、筋肉中のミオグロビンである。私たちが吸った空気は、肺に届く以前にフィルターを通される。それからそれは、私たちの肺の内部をおおう、非常に粘着性の高い粘膜に溶かされる。次に、溶かされた酸素は、肺胞細胞と毛細管の壁を通して血液の中に拡散される。

 

最後に、酸素は赤血球に取り込まれる。赤血球によって、私たちの血は赤い色になっている。この赤色は、ヘムといわれる化合物によるもので、これはヘモグロビンとミオグロビンに含まれている。ヘモグロビンに含まれるヘムは、それぞれ4つの酸素分子を運ぶことができる。ヘモグロビンに結び付けられた酸素分子は、別の酸素に付くようにヘモグロビンの親和力(ひきつける力)を増加させる。酸素が一定のレベルを超えている場合、ヘモグロビンは飽和状態となる。筋肉、脳、肝臓のような組織で、酸素が一定のレベルを下回っている場合は、酸素分子はヘモグロビンから離れる。

 

同様に、この酸素分子は、ヘモグロビンからの別の酸素分子の分離を容易にする。これは、私たちの知る、奇跡的な設計の一つである。どのような知恵も知性も持たない分子が、非常に重要な荷物を運ぶ。それが豊富であるところではそれをつかみ、それが少なく、より必要とされているところまで運び、そこでそれを放す。そして筋肉組織にあるミオグロビンは酸素を取り込み、活動時に酸素供給が不足する際のための、酸素のバックアップ資源とするのである。


胎児は、彼らに特有のヘモグロビンを持つ。それは胎児型ヘモグロビン(ヘモグロビンF)と呼ばれるもので、成人型ヘモグロビン(ヘモグロビンA)とは異なる。胎児は、母の血から、胎盤を通して酸素を得る。胎児型ヘモグロビンは成人型ヘモグロビンよりも酸素親和性が高く、それによって、母体と胎児との間の血液交換が可能となるのである。興味深いことに、出産が近づくと、胎児は、胎児型ヘモグロビンを成人型ヘモグロビンに切り替れる。これは、出生後の環境により適しているからである。現在の我々の知識では、この切り替えがいかにして起こるのか、どのように調整されるのかを完全に解き明かすことができない。未来の研究が、この複雑ですばらしい調整のメカニズムを解明することになろう。


 どうして私たちは、これほど酸素に依存しているのだろう。実際、私たちのエネルギー代謝は、完全に酸素に依存している。酵素によるブドウ糖の化学分解はエネルギーを放出させるが、それを必要な場所に移されたり、蓄えられたりすることができない。私たちは二つ目のメカニズムを備えている。それは、より有益で移動可能な形態で放出された化学的エネルギーATPを変換する、タンパク質の集合体によるものである。

 

ATP(adenosine tri phosphate,アデノシン三リン酸)は、小さなエネルギーのパッケージ、エネルギーの貨幣のように捉えることができるだろう。それはエネルギーを必要とするすべての反応において、細胞内で利用される。一つめの酵素群はそれらの化学分解の際、タンパク質から電子を分離する。電子伝達系(生物が好気呼吸を行なう時に起こす複数の代謝系の最終段階の反応系)を形成する二つめのタンパク質群は、一つのタンパク質から、高エネルギー電子と呼ばれるそれらの電子を分離する。これらの電子の最終的な受容体は酸素である。


もし、酸素が、この一連の反応の最後で、この電子を受容しなかったとしたら、この最後のタンパク質(シトクロム酸化酵素)は行き場をなくしてしまう。それによってこの素晴らしいメカニズムも、役に立たない無駄なものとなってしまう。それぞれのシトクロム酸化酵素の統合は、酸素のない状態での電子の移動のサイクルにおいて、生産されるものよりも多くのエネルギーを必要とするのだ。


細胞は、周囲の環境における酸素のレベルを感じることができることが知られている。それらは感じる機能を備えているだけではなく、それに反応する機能も備えており、それによって一定の時間、生き残ることができる。1995年、HIF(hypoxia inducible factor; 低酸素反応性因子)と呼ばれるタンパク質が発見され、酸素レベルの低下に対する細胞の反応が確認された。これによる作用によって、細胞は酸素がない状態でもATPを作り出すことができる。しかし、酸素に依存しないエネルギー発生は非常に効率が悪く、得られるものも少ない。
 最も顕著な、HIFによる酸素の感知現象は、HIFタンパク質が正常な酸素レベルの下では、同時に、合成され、分解されていることである。

 

HIFは酸素レベルが低下している時のみ蓄積され、ターゲットの遺伝子を誘導する。HIFの形成と分解が繰り返されることは、一見無駄なことのように見える。しかし実はこれは、非常にうまく設計された用心深いメカニズムである。HIFタンパク質は、HPH/PHDと呼ばれる種類の酵素によってマークされ、分解へと送られる。また、これらの酵素は、HIFタンパク質にタグ付けをする際にも、酸素分子を利用する。もし、十分な酸素が周囲になければ、HPH/PHD酵素はHIFにタグ付けをすることができない。その結果、HIFは、蓄積して、目標の遺伝子が酸素の適切な供給を確実にすることとなる。このしくみにより、細胞はすばやく適合し、生き残ることができる。したがって、HIFの連続した生産と分解は、低酸素による死のリスクに対してとられた、重要な予防策となるのだ。
 

この記事は決して、酸素の奇跡的な世界を完全に描いているわけではない。これは全体の絵に対する、最初の一筆でしかない。しかしこの、ほんの一瞥さえも、私たちがいかに完全に創造されたか、どれほどの注意が払われたかを知る助けとしては十分だろう。私たちはここに述べたどのメカニズムも、ほんのわずかでさえもコントロールしていない。
 

私たちは日夜、呼吸を行なう。あらゆる呼吸を、神への感謝のうちに行なうべきである。この素晴らしい作品の創造主であられるお方に。

 

 

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